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旧湯川邸の京都大学移管に際して願うこと

永田和宏(ながた かずひろ)

JT生命誌研究館館長、歌人

京都大学名誉教授

​専門:細胞生物学

1986年-1988年 京都大学結核胸部疾患研究所教授
1988年-1998年 京都大学胸部疾患研究所 細胞生物学部門 教授
1998年-2010年 京都大学再生医科学研究所 細胞機能調節学部門 教授​

2002年-2005年 日本細胞生物学会会長

2010年-2020年 京都産業大学総合生命科学部学部長・教授​

 この度、旧湯川邸が京都大学へ移管されたことを、とても喜んでおります。

 湯川秀樹先生の定年退官の前の最後の年、奇しくもその一年を通じて、「物理学通論」という講義を受けることができた者として特別の感慨を覚えております。

 湯川先生が物理学において偉大な発見をされ、わが国の学問を世界に知らしめたその業績を記憶し、広く継承していくことの大切さは言うまでもありませんが、また一方で、私たち後輩は、人間湯川秀樹の全体を、その幅の広さと奥行きを通して感じ、受け止めていかねばならないとも思っております。核廃絶・平和運動関係の資料をしっかり保存することは言うまでもなく、その他、湯川先生が残された種々の文章や短歌までも含めて、それらすべてが京都大学、そしてわが国の財産でもあります。

 私は、京都大学の学問の伝統は、狭い専門領域にのみとらわれず、飽くなき興味をさまざまの学問領域に、そして種々の文化活動にまで全開し、発揮していくところにあると思っております。偉大な学者は、また人間としてもその幅と奥行きにおいて例外なくおもしろいと、これまでの国内外の学者との付き合いのなかで感じてまいりましたが、湯川秀樹先生は、その意味でも傑出したモデルであり、京都大学の学生たちには、人間湯川のすべてを学び、感じとっていただきたいと願っております。

 その意味から、京都大学が、旧湯川邸の移管を受け、その資料のすべてを保管し、広く公開していただく方策をとっていただけるよう切に願っております。

 

(2021年9月13日記)