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湯川秀樹旧宅の改修工事開始にあたって

湯川邸に関わる京都市建築審査会での手続きが終わり、4月2日より工事が始まりました。

市民の会では、一つの節目にあたり、役員会としての声明を発表しました。



湯川秀樹旧宅の改修工事開始にあたって

2023年4月2日

湯川秀樹旧宅の保存と活用を願う市民の会 役員会


 本日(4月2日)、湯川秀樹旧宅の改修工事が開始されることになりました。改修工事の竣工は、来年4月に予定されています。本工事の設計は安藤忠雄建築研究所、施工は長谷工コーポレーションが担当し、工事完成後に、京都大学に寄贈されることになっているそうです。


 私たち市民の会は、この間、①湯川秀樹旧宅を保存・活用するために、京都大学や行政等に働きかける事業、及び②湯川秀樹旧宅及び庭園・遺品類の調査及び現状保存に関わる事業を、主な目的として取り組んできました。


 とりわけ本年1月から3月末日にかけて、旧宅及び庭園、遺品類の現状保存について、京都市及び京都大学に、役員を中心に頻繁に働きかけをおこない、ほぼその目的を達成できたことを、ここに報告したいと思います。


 私たちが最も懸念したことは、当初構想されていた新湯川邸の建築イメージがあまりにも旧湯川邸と異なっており、下鴨神社近隣の景観との調和も乱されるのではないかという点と、湯川秀樹先生が愛された静かな庭の佇まいと居室を広く市民や次世代を担う若い人たちに追体験してもらいたいというご遺族の想いが具体化されないのではないかという点にありました。


 そこで次の焦点は、新湯川邸がどのような建物になり、京都市がそれに対してどのような対応をとるかということになりました。この点について本年1月から本格的な動きがでてきました。2月17日には京都市建築審査会が開催され、初めて新湯川邸の設計図や管理運営体制について明らかになりました。同審査会では、京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例に基づく意見聴取がなされ、同条例に基づく保存建築物登録がなされました。また、3月17日には2回目の建築審査会での議論がなされ、建築基準法の適用除外が認められました。


 建築審査会での審議開始にあたり、私たちは別紙のような要望書を京都市建築審査会及び建築指導課宛てに提出するとともに、審査会の傍聴、情報公開手続きによる資料の入手と分析を行い、京都市や京都大学にも積極的に働きかけを行いました。


 その結果、当初は、建物全体を解体して新築建物をつくる計画だったものが大きく変更され、京都市条例にもとづいて近代建築物として価値が高い建物部分と主庭、玄関等、「湯川博士とゆかりの深い部分を現地再生で保存」するとともに、老朽化が激しく近代建築物としての価値が低い部分は撤去し、一部増築する内容になっていることが判明しました。京都市からは、建築基準法の適用除外は、この工事手法と第一種低層住宅専用地域という用途規制への対応策であるとの説明を受けています。


 一方、新湯川邸の活用法については、京都大学の迎賓館的な役割を果たすことがメインとされており、市民や他分野を含む研究者、次世代の若い研究者や学生による利用、見学等がどの程度できるのかが不明なところがあります。私たちは、引き続き、湯川秀樹先生が多くの市民に自ら語りかけた姿勢を継承し、限られた人たちによる利用ではなく、できるだけ多くの人の利活用を可能にし、湯川先生の終の棲家で先生と間接的に触れ合えるように、引き続き京都大学に働きかけていきたいと考えています。


 併せて、湯川秀樹旧宅に残された史資料についても、市民の会として進めてきた粗目録づくりを3月までに終了し、無事、ご遺族から京都大学に一括寄贈できる運びとなりました。今後、京都大学の中に、この貴重な史資料の保存、整理、目録化、情報発信、利活用について、専門的な委員会が一日も早く設置され、多くの人々が閲覧、活用できるような体制がつくられるよう、引き続き取り組んでいきたいと考えております。


 今回、考えられるなかでは最良の成果を得ることができたのは、何よりも、市民の会の会員、顧問、そして会員外の市民の皆さんからの支援があったからだと思います。また、京都大学や京都市の関係者のみなさんとの折衝のなかで、多くの方々が湯川秀樹先生を敬愛し、その居宅を京都の現地で保存、再生することに賛同し、誇りをもって積極的に動いていただいていることを改めて知りました。「湯川秀樹は、今も生きている」と、私たち一同強く感じた次第です。


どうか、これからも市民の会の活動へのご協力、ご支援をよろしくお願いいたします。

 

 




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